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第1巻1章   空から落ちて来たシャーリー

 

 

 2950年1月23日の深夜。

 

タカオカの森は、昨日から降り続いている雪のせいで、深々と冷え込んでいた。 

 

サラサラとおかまいなく降る雪で、辺り一面、銀世界に変わっていた。 

 

山の谷間から吹き上げてくる風が、枯れ木の隙間からヒューヒューと音をたてて、さらにその寒さを誘っていた。 

 

そんな寒い夜、人は一人も外に出て来ない。 何事も起こらなければ、それはいつものタカオカの冬の風景であった。

 

突然、空の向こうで稲妻が起き、森の木々がなぎ倒される大きな音がした。 

 

そして・・・何かが地面の中に入って行くウィーンという機械のような音と同時に、なぎ倒されたはずの木々はいつのまにか、いつもと同じ位置に直立したのである。 

 

落ち葉もいつもと同じようにその場所に戻っていた。 そして、何事もなかったかのような静けさに戻った。 

 

それから、一週間が過ぎた。

 

タカオカの森付近の地下50メートルほど下で、今まで見たことも聞いたこともない事が起きていた。

 

「午前6時です。 起きて下さい。シャーリー 朝の6時です 起きて下さい。シャーリー お早うございます。シャーリー ♪♪♪~」

この賑やかな時計のそばのカプセルのような形をしたベッドに、人間とそっくりな生き物が横たわっている。

 

身につけているものも防火服のような、銀白色の上から下まで一枚でつながったものだ。 

 

その生き物と思われる栗色をした短い髪の小柄な女の子が、ベッドから身を起こした。 

 

この賑やかな目覚まし時計が、呼んでいたシャーリー本人だ。

 

「オハヨウ。目覚ましちゃん。」とシャーリーは背伸びをして、その時計に変な言葉で話した。

 

「きょうは何をするのだったかしら?そうそう昨日のメモを実行しなくちゃ。」 手を口にあてて、大きなあくびをした。 

 

そして、横のテーブルに乗っているメモ紙に手を伸ばした。

 

昨夜、紙の切れ端に書いておいたメモだ。

 

「きょうからすること。食べ物を探しに行くこと。計算を続けること。何か思いついたらすぐメモを取ること。

 

とりあえず、これだけは続けなければいけないわね。」と自分を励ました。

 

ベッドの横には、茶色に変色したバナナとパンが少し、コンビニの紙袋に入っていた。 

 

シャーリーは、それを横目でにらんで、「お腹すいた~」と言って立ち上がり、ふらふらしながら洗面所まで行き、素早く手と顔を洗って戻って来た。 

 

それから、袋から硬くなったパンを取り出して、小さなテーブルに取りつけてある小さな椅子に腰かけてかじり始めた。

 

「ちょっと、硬い!」 シャーリーには、まだなじめない味なのだ。 

 

こういうみじめなことになってしまった理由は、一週間前の出来事にあった。

暗いタカオカの森に光ったあの稲妻は、この人間のような女の子の乗り物が原因だった。

 

それは、宇宙を飛び回る宇宙船バーダ号の光だった。 

 

シャーリーは宇宙飛行士で、宇宙のごみ処理の調査をするために飛び回っていたところが、何かのショックでアール星の大気圏に落ちてきてしまったのだ。 

 

シャーリーは、アール星人ではない。異星人である。

 

しかし、ほとんどアール星の誰が見ても、アール星の人間にそっくりである。

 

「まだ、本部にも、仲間の宇宙船にも、自分の家にも、連絡できない・・・」とシャーリーはため息をついた。 

 

近くで聞いているのは、先ほどの目覚まし時計の目覚ましちゃんと指令ロボットのシャベロットだけだった。

 

ヴァーダ

 



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